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D型インフルエンザなどマイナーなインフルエンザ 再掲載

読むのがめんどくさい人は⬇︎を。詳しく知りたい人は本文をご覧ください!!

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インフルエンザウイルスってD型まであるって知ってます?

今回はインフルエンザウイルスのA型以外についてのお話です。

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インフルエンザって大変ですよね!

 

A型やB型ならまだしもD型?と思いましたか?その間のC型はどうなんでしょう。A型についてはいろんな人が解説しているので、今回はあまり解説されないB型、C型、D型インフルエンザについて解説します。

 

 

B型インフルエンザウイルス

B型インフルエンザウイルスには大きく山形系統とビクトリア系統の2つがあります。

その2つに加えて、ゲノムと呼ばれる生物が生命活動を営むために必要な最小限の遺伝子群がありますが、これをA型インフルエンザと同じ8個持っています。

2つの大きな系統があり、それがさらに8種類の遺伝子群が別れています。

 

さらにインフルエンザのウイルスの外側にエンベロープという膜のような分子があり、そこにウイルスの特徴を表すヘマグルチニンHAとノイラミニダーゼNAと呼ばれるタンパク質があります。B型はそれぞれ1種類のみしかありません。

A型だと僕が医学生の時にはヘマグルチニンが16種類、ノイラミニダーゼが9種類と習いましたが、現在はヘマグルチニン18種類、ノイラミニダーゼは11種類まで見つかっていて、この組み合わせだけ同じ型でも大きく性格が違うA型インフルエンザが存在していることになります。B型はその点では同じ型であれば同じ特徴を持っていることになります。

A型が人以外の動物にも感染するのに対して、B型は人にのみ感染し、2つの系統が同時期に混合流行することもあると報告されていて、なぜか1年おきに流行することが多いです。点突然変異と呼ばれる抗原性変化(かかりやすさや病気の重症度が変化する)がある程度で、1回かかるとしばらくかかりにくいです。

 

C型インフルエンザウイルス

A型、B型インフルエンザウイルスにあるヘマグルチニンとノイラミニダーゼがなく、これに変わってヘマグルチニンエステラーゼがあります。これが1種類しか存在しないため、変化が乏しいウイルスで、子供に主に感染して風邪症状を引き起こす程度ですが、稀に成人のARDSと呼ばれる重症の感染症を引き起こすとの報告もあります。C型も人にのみ感染します。

 

A型は詳細は省きますが、他の動物にも感染する人獣共通感染症の一つで、豚は人からも鳥からもA型インフルエンザウイルスに感染してしまうのでその中で遺伝子再集合という遺伝子が入れ替わって不連続抗原変異と呼ばれる新しいタイプが誕生して大流行することがありますが、B型もC型も人にのみ感染するのでそこまで大流行しません

 

さて、本題の

D型インフルエンザウイルス

って聞いたことありました?

 

正式に認められたのは2016年です。

2011年にアメリカのオクラホマ州で重い風邪っぽい症状がある豚の鼻水からA型インフルエンザではないかとRT―PCR法で検査をしましたが陰性でした。

でも、なんかおかしいと思って豚の精巣細胞に摂取したところ細胞変性効果と呼ばれるウイルスが感染した時に現れる変化があり、ウイルスが見つかりました。

最初はC型インフルエンザの仲間なのではないかと思われていて、2011年にはC型インフルエンザの一種としてC/swine/Oklahoma/1334/2011と命名されましたが、C型インフルエンザは33℃でよく増殖して37℃でほとんど増殖しなくなるのに対してこのみつかったウイルスはどちらの温度でもよく増殖するという点が異なりました。豚で抗体保有率9.5%でしたが、ウシはもっと高い値だったため、C型インフルエンザに似ている部分はあるが、別物だということがわかり、2016年に国際ウイルス分類委員会(ICTV:International Committee on Taxonomy of Viruses)でD型と認められました

 

D型インフルエンザは牛の重い風邪症状を引き起こす牛呼吸器病症候群(BRDS:bovine respiratory disease complex)という病気の原因ウイルスだと判明しています。

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D型インフルエンザは牛の病気の原因

 

その後、羊、ヤギ、ラクダでも感染することがわかり、最初にそのウイルスにかかった生物、これを自然宿主といいますが、ケニヤのラクダ293頭のうち287頭の98%の抗体保有率だったことから自然宿主はラクではないかと考えられています。ちなみにA型インフルエンザの自然宿主はカモなどの渡り鳥で、コロナウイルスはコウモリ、エボラウイルスもコウモリです。

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D型インフルエンザウイルスの自然宿主はラク

 

日本でもD型インフルエンザウイルスにかかった牛や豚が見つかっています。2016年1月8日に茨城県ホルスタイン28頭中8頭がD型インフルエンザウイルス陽性だったところ、1月15日からBRDSの症状がある牛が4頭出たので2月3日に再度検査をしたら27頭がウイルス陽性でした。1頭は肺炎を併発して死んでいます。感染力がとても強いことを意味しています。

 

では、

D型インフルエンザウイルスは人には感染しないのでしょうか?

今のところ感染した報告がないので感染しないと言えます。

この言い回しの歯切れが悪いところがイエスなの?ノーなの?と聴きたくなりますよね…。ここが『専門』を語る人のめんどくさい部分です。私も医者という病気が『専門』のため、歯切れが悪い答えになってしまいます。

それは実験室ではD型インフルエンザウイルスを人の気管支上皮細胞に感染するかを確認したところ、感染したため、今後、人にも感染する可能性はあるという報告があるためです。

D型インフルエンザウイルスを無効化する抗体を中和抗体といいますが、牛と接触する人は97.2%が抗体陽性だったのに対して牛と接触歴がない人で18.2%が抗体陽性だったと報告があり、牛から人に感染する可能性があるのではないか、牛に接触したことがない人にも抗体が認められることから人から人に感染した可能性があるのではないかと言われていますが、感染していたとしても風邪として見逃されているか、無症状が大半なのではないかと考えられています。D型インフルエンザウイルスが人にも感染する場合は人獣共通感染症と考えられ、もしそうだとすると突然変異や悪性化するリスクはあるかもしれないと考えることになります。

 

 

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