医者になってからの勉強ってそんなに簡単じゃないんだよね…『高血圧の話』no.3『初期評価について』
さて、『高血圧の話』の続きです。そろそろ退屈ですよね…、わかります、わかります。
高血圧の初期評価
初期評価は3つの軸で行うとわかりやすいです(JNC7より)。
①心血管リスクの評価
②臓器障害/心血管疾患合併の有無
③二次性高血圧の除外
の順番です。
①心血管リスクの評価として
電子カルテから
年齢(男>55歳、女>65歳) 受付時に確認しているはず!
肥満(BMI>30) 初診時に身長・体重測定を忘れずに!
検査より
糖尿病 血糖値、HbA1c
脂質異常症 HDL、T-cho、TG
※保険上LDLを含められず、LDL=T-cho-HDL-TG/5で代用するかHDL、LDL、TGの3項目とする
腎機能 BUN、Cre、eGFR
非弁膜症性心房細動 心電図
微量アルブミン尿(保険で認められないので実際には尿蛋白定量/尿中Cre比)
問診より
脳心血管系疾患の既往の有無
若年発症の心疾患家族歴
運動習慣の有無
喫煙の有無
を確認します。この結果でJSH2019の治療開始計画も定まります。
②臓器障害/心血管疾患合併の有無(①の検査結果も参考にします)
脳:脳卒中または一過性脳虚血発作
腎臓:慢性腎疾患
血管:末梢動脈疾患
目:網膜症
ESH/ESC2018を参考にすると
すべての高血圧患者に対して
ClassⅠ:心電図、eGFR、尿蛋白、微量アルブミン尿
ClassⅡa:心エコー、頸動脈エコー、ABI、頸動脈と大腿動脈の脈波伝播速度(cfPWV)
特定の疾患を疑う場合
心筋梗塞を疑う場合:負荷心電図(ClassⅠ)
不整脈の病歴や所見ある場合:長時間心電図(ClassⅡa)
治療困難例:眼底所見(ClassⅡa)
認知機能障害ある場合:頭部CT・MRI(ClassⅡb)
Classの意味はこちら
ClassⅠ:その治療や処置が有益・有用・有効という根拠がある、and/or、合意がある
ClassⅡ:その治療や処置の有用・有効性に関して相反する根拠がある、and/or、意見の乖離がある
ClassⅡa:有用性・有効性を支持している
ClassⅡb:有用性・有効性の根拠や意見はあまり十分に確立していない
※この全部をやりなさいという意味ではありません。
③二次性高血圧の除外 4系統に分けると見落としにくい
でも覚えきれないのでTSHのみスクリーニングを行い、必要に応じて検査を追加する。甲状腺のスクリーニングとしてはfT4やfT3は不要と言われ、TSHのみだと110点+判断量生化Ⅱの144点に対してTSH、fT4、fT3の3項目だと410点+144点で300点も保険点数が高い!です。
他のスクリーニングは年齢別に以下の通りですが、追加するとしたらポリソムノグラフィー、レニン/アルドステロンくらいで、自信があれば腎動脈狭窄や腎萎縮などを確認するためのエコーを追加します。病院セッティングだともっとアグレッシブで良いと思いますが、クリニックセッティングだと過剰とされて保険請求が認められないことが多いので、これ以上の検査が必要な場合は総合病院に紹介してお任せすることになります。
…というところで高血圧の診断がついて、初期評価が終わったところです。
これから治療の話になりますが、今日はここまでにしておきます。
さすがに今回の部分は完全に医者向けなので、動画にしていません。
参考文献
7) Viera, Anthony J., and Dana M. Neutze. "Diagnosis of secondary hypertension: an age-based approach." American family physician 82.12 (2010).