family-doctor-shin’s blog

医学を中心にお勉強するブログです!


院内通信を動画にしました。更新はゆっくりですが、チャンネル登録お願いします
応援お願いします⇨ 1回クリックして応援してください➡︎

記事にお気軽にコメントをしてもらえると嬉しいです!!

コレステロールって何が悪いの?no.3 ガイドラインの変遷 日本編

しばらく脂質異常症の続きです。

f:id:family-doctor-shin:20210223003841p:plain

日本の場合!

前回お話しした通り、日本のガイドライン

『Treat to target』

と呼ばれる、目標値を定めてその目標値を達成する様に治療するのが良いよーと言っています。

 

治療ガイドラインとしてはJAS2017が最新(脂質異常症ガイドライン2018はほぼ準拠している)なので、その1つ前のJAS2012との比較を把握すると変遷がわかりやすいです。

 

JAS2012

  • LDL-Cの測定は原則としてFriedewald式
  • NIPPON DATA80を用いて冠動脈疾患死亡率の絶対リスクを計算
  • 用いられていたパラメーターが年齢、性別、喫煙の有無、血圧、総コレステロールでLDL-Cは用いられていなかった。
  • スタチンがない時代の研究
  • ハイリスクが冠動脈疾患死亡率2%以上

 

JAS2017では

  • LDLはFriedewald式でも直接測定でも良いがLDL-Cの方が若干優位性があるとしている。
  • 吹田研究を用いた吹田スコアを採用
  • 用いられていたパラメーターは年齢、性別、喫煙の有無、糖尿病、血圧区分、総コレステロールまたはLDL-C、HDL、CKD
  • ①LDLを採用し、細かく分類している
    脳出血をエンドポイントとして含まない
    ③死亡ではなくイベント発症がアウトカムのため、
    ハイリスクの定義が10年間の冠動脈疾患発症率9%以上となっている

 

ちょっと横道にそれると
LDL-CについてFriedewald式LDL-Cの直接測定
どちらでも良いとなった理由については
昔はLDL-Cを直接測定する試薬が良いのがなかったらしいんですよねー。
そのため、過去のトライアルは
Friedewaldの計算式を使ってLDL-Cを算出していたのですが、
今は直接LDL-Cを測定できてしまう。
そのため、計算式のLDL-Cのエビデンス
LDL-Cを直接測定させたものと
一致させて良いのかに疑問があるので、
JAS2017はどっちでも良いよーという記載になっているみたいです。
あと、保険診療では
T-cho、LDL、HDL、TGの4つを測定することはできない
(厳密にはT-cho、LDL、HDLの3つのうち2つまで)ので、
TGが高くなければ
今でもLDL-C=T-cho-HDL-TG/5のFriedewald式を使う施設が多いです。

 

難しいと思うけれど、まとめてみると…

脂質異常症で意味がある値はLDLコレステロールのみ
(TG≧500mg/dLが急性膵炎リスクになることを診療ガイド2018は新たに言及しているが、TGを下げることのメリットはエビデンスなし)

・疾患などでリスクを分けて治療目標を設定
(でも、ガイドラインの中にエビデンスがないことは重々承知しているが日本人は目標数値があった方が頑張れるでしょ?的なことが書いてある)

目標値はあくまで努力目標

となります。

 

日本にいる限り、日本人を対象とした吹田研究をもとにした吹田スコアをきちんと活用すべきだと思いますが、
海外のガイドラインは全て無料なのが原則なのに対して、
日本のガイドラインは有料なものがほとんどです。
(循環器学会や透析学会などはとても質の良いガイドライン
全て無料で提供している少数派の良い学会です)

 

また、海外のガイドラインの後追いになることも多く、改訂速度が遅いので、
海外ガイドラインを参考にして
日本のガイドラインで修正して診療
に使われることが良くあります。

 

患者さんに説明するときには

こんなに悪玉コレステロールが下がりましたねー!」

日本のガイドラインにしたがって説明して賞賛します!

そうすると患者さんから

「それじゃぁそろそろお薬を減らせます?」

と聞かれると、LDLコレステロールは下げれば下げるほどリスクが下がるので

今のお薬を飲んでいる状態がちょうど良いと思いますよー!」

とそのまま飲み続けることをお勧めしています。

 

よく雑誌で
〇〇スタチンは飲むなとか
悪玉コレステロールは下げすぎると死んでしまう
などと書いてあり、切り抜いて持ってくる人もいるのですが、
医者という専門家の立場からみる
どこに根拠があって書いているのかなぁとか
なんでそんな良くわからない人が書いた内容を
信じてしまうんだろうと思います。

 

しかし、大昔にユリウス・カエサル

『人は喜んで自己の望むものを信じるものだ』

と言っています。

 

基本的に私は
ガイドラインや過去のトライアルの中で信憑性の高いもの
ピックアップして紹介していますが、
かかりつけ医を信じるというのも一つの信念みたいなものなので、
患者さんが望んでいるものと一致する内容だと良いなーと思いながら
信じてもらえると良いなーと思って
健康に関する話を紹介しています。

 

次は具体的に誰を治療するの?という話です。

 

 

ちなみにですが…
ここまでの脂質異常症の話を専攻医にする
ほぼ全員が飽きてしまう内容なので
一応説明はするのですが、覚える気がない先生が多いので
結局次の具体的に誰を治療するの?という話しか聞いてくれませんw