family-doctor-shin’s blog

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コレステロールって何が悪いの?no.2 ガイドラインの変遷 アメリカ編

しばらく脂質異常症の続きです。

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脂質異常症脳卒中のリスク!

 

脂質異常症の治療についての考え方が
海外と日本で異なる(様に見える)理由については
まずガイドラインの経緯を確認した方がわかりやすいので、
そこから説明します。

 

ガイドラインの経緯

米国について

ATP−Ⅲというガイドライン
ACC/AHA Guidelines 2013を経て
ACC/AHA Guidelines 2018となって現在に至ります

米国はNational Cholesterol Education Program (NCEP)
によるガイドラインATP-Ⅲ(Adult Treatment Panel Ⅲ)を2002年に発表、
2004年にupdateし、2013年度まではメインとして使用されていました。

その後ACC/AHA Guidelines2013
(American College of Cardiologyと
American Heart Associationが
National Heart, Lung, and Blood Institutesと
協働して2013年11月に発表、
ATP Ⅳの作業グループメンバー16名がそのまま作成に関与)
が作成されてACC/AHA Guidelines 2013が作成され、その後2018に改訂。

 

ガイドラインの大きな違いのポイント
ATP-Ⅲまでは目標に合わせて薬物投与量を調整する
『Target to treat』と呼ばれる治療方針だった

のに対して(日本のガイドラインのJAS2017と脂質異常症診療外度2018も同じ方針を採用)
ACC/AHA2013以降は決まった量のスタチン系を使い続けることが重要
LDL目標値がなくなった
『Fire and forget(治療自体を行えば調整不要)』と呼ばれる内容

に変更になったことが大きい変化です。

 

詳細が気になる人へ(気にならない人は読み飛ばした方がよいです)

・ATP-Ⅲまでの特徴は冠動脈疾患リスクを評価し、
リスク別にLDL目標を設定し、
目標に合わせて投与量を調整していましたが、
プラセボ群vsスタチン投与群」や
「中用量vs高用量」など
決まった量のスタチンでの研究はありましたが、
目標値を決めてスタチン量を調整する内容のRCTがなく、
用量を調整することが良いのか悪いのかのエビデンス
はっきりとしていない点や
ナイアシン、エゼチミブなどその他の脂質改善薬では、
LDLやnon-HDLは下がったが、
心血管イベントは減らさなかった点が問題となりました。


問題点としては
①リスクが高いからといって、強力にLDLを下げたらリスクが減らせるかどうかは別問題
②LDL目標達成者に投薬を減量or中止してもリスクは抑えられたままかどうかも別問題
 の2つに対する批判が強かった点です。

・ACC/AHA2013以降はそれまで
10 year risk(10年以内に心血管疾患を発症するリスク)の計算ツールとして、Framingham Risk Scoreを使用していましたが、
計算方法が変更になり、
治療対象者にはなるべく高強度のスタチンを使い、
LDLの確認も用量調整も不要となりました。

 

そして、ACC/AHA2018では治療目標値を設定しない方針は引き継がれましたが、
2013年ではスタチンのみが推奨されていた治療選択肢に
エゼチミブとPCSK9阻害薬が新たに追加されています。
治療目標値ではないですが、
スタチン選択の目安としてLDLが70mg/dL以上か未満かの記載があります。

 

LDLを下げすぎると死亡率が上がるのでは?

 → 死亡率が上がりません。LDLが下がる傾向なら癌などが隠れていないかを確認しましょう!LDLを下げれば下げるほど脳卒中などのリスクは下がりますよー

 ー日本動脈硬化学会でも違いますよー(日本動脈硬化学会-公式サイト-のQ5)とか、Michos, Erin D., John W. McEvoy, and Roger S. Blumenthal. "Lipid management for the prevention of atherosclerotic cardiovascular disease." New England Journal of Medicine 381.16 (2019): 1557-1567.だとLDL<10mg/dLまで下げても副作用はないよーとされています。

LDLコレステロールは下げれば下げるほどリスクを低減するが、スタチン療法に耐えられるかどうかによります。

 

ここまでをまとめると…

『治療をするなら副作用がなければとにかくできるだけ強めのスタチン系の薬を使えばよくて、LDLの値なんて参考程度で別にみなくてもいいんだよー』

と言うのがアメリカの脂質異常症ガイドラインの考え方でした。

『Fire and forget(治療したら目標値のことは忘れちゃいな!)』

という方針です。

 

だって
目標値を達成させる様に治療しようがしまいが、
LDLは下げられるだけ下げた方がリスクが下がるんだからー
という考え方です。

 

次に日本のガイドラインで採用されている

『Treat to target』についての解説です…が長くなったので次回に!