医学生や医者ってモテモテなんじゃないの?っと思っている人のための記事〜2グループ目No.7
うつ状態で体のだるさ(倦怠感と言います)が続いていてどこかが悪いからではないかと信じている患者さんがいました。医学的な診察ではおそらく脱水による倦怠感(真夏でしたので…)と私が考えているが、患者さんは脱水にはなっていないと思っている場合です。前回受診時に採血をして結果説明で受診しています。
私の理解:脱水で倦怠感が生じているのでちゃんと水が取れれば自然に改善する
患者さんの理解:体のどこかが悪いに違いない。
私の提案:暑いから倦怠感があるのではないですか?
患者さんの理解:体のどこかが悪いが、暑さも加わってだるくなっているのかも。
患者さんの発言:お彼岸になれば良くなるかもしれない
私「お彼岸になれば良くなるかもしれませんねー。」
患者さん「涼しい風が吹くと楽になるかもしれませんね。」
私「涼しい風が吹くと楽になるかもしれませんね。」
夏バテの薬は医学的には処方してもしなくても大きい差はないと思います。
患者さんの理解している内容と両立してその理解を否定するわけではなくて治療に結びつく内容を提案していくという枠組み(厳密にはもっと違う説明をしますが…)がナラティブベースドメディスンと呼ばれるものです。患者さんの発言のうち、こちらが強調したい内容を繰り返していたのが動機付け面接と呼ばれる部分…と細かい枠組みや定義で説明されることがありますが、患者さんが納得できる理由を見つけていくことが重要で、納得できれば症状が良くなることが多いです。
大前提として、
そもそも私(医者)の理解が間違っていることもありますよー。100%正しいことは存在しないと思っているので、その時の医学の世界で正しいと思われていることや自分の理解で正しいと思っていることを患者さんに説明しているつもりですが、誰にとっても常に正しいこととは限りません。時間がたつと間違いがわかることもあります。
逆に患者さんが思っている理解に対して単なる説明でこちらの理解と一致してもらえれば私の理解が正しかろうが間違っていようが患者さんが納得してくれている状態です。間違った治療だとしても納得してくれていると症状が良くなることはあります。
問題は医者の理解と患者さんの理解が異なっている場合(物語とかナラティブと呼ぶ)に、さて、どうやって落とし所(お互いに妥協して納得できる内容)を見つけられるのか、そこに焦点を合わせた話がナラティブベースドメディスンと呼ばれたりします。
今回のやりとりで
患者さん←医者側の提案
体のどこかが悪い←採血ではそうでもないよ
でもやっぱり体のどこかが悪い←じゃぁ暑さで悪いのでは?
体か暑さのどちらかで悪いのかなぁ←そうそう
暑さがなくなれば良くなる?←暑さがなくなれば良くなる!!
涼しい風が吹けば良くなる?←涼しい風が吹けば良くなる!!
そっか、じゃぁ夏バテで体が悪いのか←そう言う解釈も成り立つよ
みたいなやりとりを外来でしていたわけです。
後半部分は動機付け面接だったり、細かく言えばこの解説に対しても揚げ足を取ることもできるんだけれど、重要なことは
『患者さんが満足して帰ること』
なんだと思います。
今回の学生さんは患者中心の医療とか家庭医療の業界用語を良く知っていたので結構長めに説明はしてみました…
が…
途中からあまりにも理論などの名前にこだわりすぎている感じが強いので、たくさんの理論の名前を覚えていることや細かい定義が言えることが重要なように思ったり、スーパードクターがいるかのような錯覚に陥りがちなんですが、自分がそうなる必要はないんですよね。知らないよりは知っていた方が外来でうまくいくことは多いですけどね。
指導医になると教えないといけないから止むを得ず覚えましたが、健康で長生きをしてもらいたいと本当に思っていれば細かい理論はわからなくても伝わるんじゃないかな?という話もしてみました。
自分から行動変容や動機付け面接に注目して見学してね…と言っといてなんなんですが…しかもテストにもでるのでやっぱり覚えないといけないことなんですが…矛盾してます…自分…
続く