高血圧の目標値について
今回は高血圧についてお話しいたします。
高血圧の治療についての歴史(大きい流れ)
1960年代は血圧を下げる必要がないと言われていて、 お薬も1種類しかありませんでした。当時は上の血圧(収縮期血圧)が200mmHgを超えていても問題ないと言われることもあったみたいです。
1991年のSHEP試験という研究で収縮期血圧( 上の血圧) が160以上の場合に降圧剤を使って血圧を下げると脳卒中や心筋 梗塞を抑制できることがわかりました。 ただし80歳以上の方が参加していなかったので高齢者は除くとさ れました。
一方、 下の血圧(拡張期血圧)は下げすぎると死亡率が上昇するのではないかという仮説 がありましたが、ACCORD- BPという研究で糖尿病患者さんのみを対象としていましたが低い 値があっても問題がないことが確認され、 下の血圧は高い場合をのぞいて問題にしなくて良いと言われていま す。
2015年にSPRINT試験という大規模な研究で上の血 圧が120と140のどちらの血圧がより望ましいかという研究が 行われ、 途中で明らかに120にした方が全死亡率が低かったため、 中止勧告を受けて終了となりました。 80歳以上の高齢者に限って確認しても120- 130程度の血圧が望ましいことがわかりました。ただし、 ふらつき症状がある場合には下げすぎないようにすることが重要と も言われています。 高血圧の期間が長いほど死亡率が上がることもわかっています。
高血圧に関してはこのような歴史的な経過があるため、 150でも良いと言われたことがあったかもしれませんが、 現在では上の血圧は120程度、 下の血圧は80より低ければ低い方が望ましいと考えられています(※厳密には日本のガイドラインでは疾患別に目標値が異なり140/90または130/80mmHgが目標値になっています。アメリカのガイドラインACC/AHAでは一律に130/80mmHg未満が目標とされています)。