円形脱毛症の治療って?
円形脱毛症ってなったことがありますか??
今日は円形脱毛症のお話しです。
実習中にいくつものクリニックの診察を受けて塗り薬などを使っていたが良くならないという女性が受診しました。
最初に結論から言えば、円形脱毛症に効果的な治療はないんです…。
皮膚科学会のガイドライン2017ではステロイド局所注射療法と局所免疫療法とステロイド概要療法とかつらの使用が推奨度Bで、それ以外は行っても良い程度の推奨しかありません。
医者の世界だとシステマティックレビューといういくつかの研究を統合して治療が有効かどうかを判断する研究が重要視されますが、円形脱毛症に関するシステマティックレビューで効果がある治療方法はありません1)し、再発を防ぐなどの効果もありません2)。
円形脱毛症になってしまう理由としてストレスで自分の毛根を攻撃してしまうのではないかと言われていますが、ストレスが原因というとなんとなく納得してしまうマジックワードなので本当かな?と思ってしまう部分もあり、皮膚科学会のガイドラインも安易にストレスというのは科学的根拠に乏しいと述べています。
治療はあんまり効果があるわけではないけれどステロイドの塗り薬を使うことが多いです。
一番大事なのは患者さんが満足する内容を模索することで、一定期間が経過すると自然に治ることが多いので、後から見た医者の方が名医なわけではなくて有利な立場です。逆に言えば、時間が経たないと良くならないのでいくつものクリニックを受診することにつながってしまいます。2週間後の再診で症状は改善傾向でした。全然良くならなかったのに漢方が良く効きましたと満足して終了になりました。
今回は有利な立場で診察にあたったので、1〜2週間後に再診してもらうと多分、何をしても良くなっていたと思います。私が名医なのではなくて、時間が解決しているだけなのですが、前医の治療が効果がなかったという部分を訂正するのは難しいことが多いです。私のクリニックに最初に受診していたら治療の効果がなかったと思います。
ただ、見逃してはいけない病気が隠れている場合もあり、梅毒や甲状腺疾患、SLEや特殊な病気としてトリコチロマニア(抜毛症とも言い、自分で毛を抜いてしまう子供に多い精神的な病気)の可能性は考えないといけないので、円形脱毛症と言い切れるかどうかが医者としては重要な視点になっています。
後医は名医というのはこんな状況なのではないかと思います。
私側の問題ではありますが、ヤブ医者になりたくないとは思っているので、前医の立場で診察をしてもできる限り起こりそうな状況を説明するようにはしています。
1)Delamere, Finola M., et al. "Interventions for alopecia areata." Cochrane database of systematic reviews 2 (2008).
2)Messenger, A. G., et al. "British Association of Dermatologists’ guidelines for the management of alopecia areata 2012." British journal of dermatology 166.5 (2012): 916-926.