family-doctor-shin’s blog

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ゴミ屋敷に住んでいる人は病気?

ためこみ症(Hoarding disorder)って聞いたことがありますか?

物などの価値にかかわらず、捨てることが苦痛で捨てられないという病気です。ゴミ屋敷と呼ばれる状態だったり、物ばかりではなく、動物を飼育して捨てられない犬屋敷や猫屋敷などと呼ばれる状態もこの病気の場合があります

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ゴミ屋敷


以前は強迫性障害と呼ばれる本人はつまらいとか好んでいないと思っているある行動を、わかっていながらしなければいられない状態の一種と考えられていました(DSM-Ⅳ)が、ためこみ症は好んで物などをためこんでしまうのでDSM−Ⅴで別の病気とされ、国際疾病分類と呼ばれる病気の分類の第11版でも別の病気となりました。

 

成人のためこみ症の有病率は約2〜6%程度1)と言われ、イギリスでは1.5%2)の報告があります。

 

全般性不安障害(40%弱程)、大うつ病性障害(30%程度)、強迫性障害(20%程度)、パニック障害(20%弱程度)などを合併することもあります。

 

双子を対象とした研究でどのくらい遺伝が関与しているのかを調べた研究が30〜50%くらいの報告が多いのですが、最近の報告3)だと30〜40%程度のようです。

 

 

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片付けられない!

ためこみ症の特徴

プラモデルやフィギュアなどを集めるコレクターとの決定的な違いは不衛生な状態でも、火災などが発生するリスクがある状態でもものを集めてしまう状態で、仮に本人が片付けようと思っても本人は捨てることに苦痛を感じてしまいます。また、コレクターとためこみ症の大きな違いはコレクターは狭い範囲のアイテムに限定されていることが多く、選択してものを収集するのに対して、ためこみ症は広い範囲の物を集めてしまうことが多いです。特に他人が捨てようとすることに対して強く嫌悪感や苦痛を感じてしまう状態がためこみ症です。本人は物などを集めて保存することが『好ましい』行為だと考えていることも特徴です。

 

診断基準は

A.実際の価値とは関係なく、所有物を捨てること、または手放すことが持続的に困難である。
B.品物を捨てることについての困難さは、品物を保存したいと思われる要求やそれらを捨てることに関連した苦痛によるものである。
C.所有物を捨てることの困難さによって、活動できる生活空間がもので一杯になり、取り散らかり、実質的に本来意図された部屋の使用が危険にさらされることになる。もし生活空間が取り散らかっていなければ、それはただ単に第三者による介入があったためである(例:家族や清掃業者、公的機関)
D.ためこみは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な分野における機能の障害(自己や他者にとって安全な環境を維持するということを含めて)を引き起こしている。
E.ためこみは他の医学的疾患に起因するものではない(例:脳の損傷、脳血管疾患、プラダー・ウィリー症候群)。
F.ためこみは、他の精神疾患の症状によってうまく説明できない(例:強迫症の強迫観念、うつ病によるエネルギー低下、統合失調症や他の精神病性障害による妄想、認知症による認知機能障害、自閉症スペクトラム症による限定的興味)。

6つ全てを満たす場合です。

 

ためこみ症の人は失業することが多く、未婚、別居、離婚することが多い傾向があり、自分の住んでいる場所にも物をためこんで火災や不衛生で病気になるリスクがある状態です。

 

11〜15歳くらいからためこむ行動が始まり、20代半ばまでで日常生活にも支障をきたし始めます。30代半ばには日常生活を送ることが困難となり、ゴミ屋敷や犬屋敷・猫屋敷などと呼ばれる状態になります。

 

治療はとても難しく、そもそも本人が治療を求めていないことが大半で、専用の認知行動療法が用いられます。6ヶ月後に71%が改善したと言われますが、治療からの脱落者が多く治療を完遂した人の41%が症状改善した程度4)です。薬物治療の効果もあまり芳しくありません。

代表的な認知行動療法として意思決定と分類のトレーニンというものがあり、『このものは捨てても大丈夫』と患者さん自身で決定することを促し、実際に捨てさせることを経験させて『物を保存しなくても大丈夫、捨てても大丈夫』という認識を身につける方法があります。

早期に介入して物を保存する理由や保存しない経験、物を捨てる経験を積ませることが重要と言われますが、治療を専門的に行なっている医療機関を探すことも難しいのが現状です。

 

ためこみ症を疑うスクリーニングの質問としては

  1. 持ち物を捨てたり、手放したりするのは難しいと思いますか?
  2. あなたの家のメインルームを散らかすものがたくさんありますか?

という内容をお聞きしますが、ご自分や家族が当てはまる場合は早めにかかりつけ医や精神科を受診して相談されることをお勧めします。

 

 

1) Pertusa, Alberto, et al. "Refining the diagnostic boundaries of compulsive hoarding: a critical review." Clinical psychology review 30.4 (2010): 371-386.

2)Nordsletten, Ashley E., et al. "Epidemiology of hoarding disorder." The British Journal of Psychiatry 203.6 (2013): 445-452.

3)Ivanov, Volen Z., et al. "Heritability of hoarding symptoms across adolescence and young adulthood: A longitudinal twin study." PloS one 12.6 (2017): e0179541.

4)Steketee, Gail, et al. "Waitlist‐controlled trial of cognitive behavior therapy for hoarding disorder." Depression and anxiety 27.5 (2010): 476-484.

 

 

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