family-doctor-shin’s blog

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免疫チェックポイント?阻害しちゃう?

今回は免疫チェックポイント阻害薬のお話しです。2018年に本庶先生がノーベル生理学・医学賞を受賞された免疫チェックポイント阻害因子が治療に応用されたお薬です。

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免疫!

 

極端に話の内容が難しくなり、医者をしていてもこんなことを理解するのは大変だなぁとつくづく思っていますが、最近の医学はこんなにも進歩しているんだという程度で読み流してください。中堅の医者である自分には理解するのがやっとでこんなすごい薬を開発してしまった本庶先生とか天上人がどうやってこんな難しいことを考えているのかはよくわかりませんが、頑張ってくれている研究を主としている先生方のおかげで医学が発展しているのだと、日々ありがたいと思っています。

 

今までの医学的な内容をさらっと伝えると、癌を自分が持っている免疫で倒そう!と思って使用される薬としてIFN-α(インターフェロンアルファと読みます)やIL-2(インターロイキンツーと読みます)などのサイトカインと呼ばれる体の細胞に命令を伝える物質を追加して免疫力を高めるサイトカイン療法と呼ばれる治療か、ワクチンに代表される免疫を強くして癌を直接攻撃する治療が代表的でした。

 

現在は癌細胞そのものを標的としていなくて患者さん自身の免疫系を強くする(医学的には賦活化と言います)することで癌細胞を攻撃するようにするのが免疫療法のターゲットになっています。

 

免疫とはマクロファージやNK細胞、樹状細胞と呼ばれる細胞が体にとって異物(抗原と言います)だと判断するとそれを排除しようとする自然免疫と抗原を提示されたT細胞が抗体を賛成するB細胞を選択的に活性化して抗体と呼ばれるより強力な攻撃を加えて異物を除去しようとする獲得免疫があります。単純にいうと自然免疫は異物全部に対して手当たり次第攻撃をしますが、攻撃力が低く、その後、時間はかかるが専門のSWATみたいな超強力な攻撃力が高い部隊が獲得免疫だと思ってもらえればそんなに外れていません。T細胞が司令官で、B細胞が拳銃を持った実働部隊だという感じです。

癌細胞は体にとって異物と認識されれば攻撃対象となり、獲得免疫によって排除されるはずです。

 

かつては癌細胞は異物として認識され、免疫システムによって排除されるという『がん免疫監視説』と呼ばれる考え方が一般的でした。しかしながら、その後癌は免疫システムをうまくかいくぐって増殖することがわかり、「排除相」「平衡相」「逃避相」の3つの場面をもつ『がん免疫編集説』という考え方が正しいのではないかと考えられています。

 

もう少しがん免疫編集説について詳しく説明すると

  • 排除相…がん細胞が遺伝子の変異細胞として生体内で発生すると異物として免疫担当細胞が攻撃して排除されてしまう状態
  • 平衡相…MHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子という『免疫細胞が遺物だと認識するマークのようなもの』を消失させることで異物であることを隠したり、抗原としての性格の強い異常なタンパク質を隠すなどして免疫細胞からの攻撃を逃れる状態
  • 逃避相…過剰な免疫反応を抑えるregulatory T cell(Treg)と呼ばれるT細胞の一種などの免疫細胞や免疫チェックポイント分子のしくみを積極的に利用して免疫による攻撃を回避してがん細胞が増殖する状態

があると考えられています。

 

有名な本庶教授らはT細胞のアポトーシス(自分で死んでしまう)の原理の解明を目指し、獲得免疫のT細胞は抗原情報を記録する細胞だけを残し、アポトーシスによって消滅してしまうことと、活性化したT細胞に発現するPD-1(programmed cell death-1)遺伝子を発見しました。PD-1という名前はアポトーシスの原因になんらかの役割をはたす重要なものであってほしいという願いを込めて命名されたようですが、実際にはアポトーシスの役割をはたすものではなかったのですが、別の重要な役割がわかりました。

PD-1ががん細胞の表面にあるPD-L1と結合するとT細胞の機能が抑制されることを明らかになりました。司令官であるT細胞がやる気を無くしてしまうのです!

 

そして、2014年にPD-1をブロックする抗体を用いたニボルマブオプジーボ®)が日本で承認されました。PD-1をブロックするとT細胞の機能が抑制されないので免疫よって癌細胞が攻撃されます。その後PD-L2も発見されています。

 

アリソン教授らは1987年にフランスの研究チームががんを認識するT細胞の活性化にかかわる物質として発見したCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte associated antigen 4)(シトラフォーと読みます)について調べ、この分子がT細胞によるがん細胞への攻撃にブレーキをかける働きだと1995年に突き止めました。このCTLA-4をブロックする抗体を投与してがん細胞の消失や退縮をもたらす効果をマウスで実証し、2011年にイビリムマブ(ヤーボイ®)が米国で承認されました。

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PD-1とCYTLA4の関係

 

難しいですねー!

まとめると攻撃しろーと命令を出すT細胞にPD-L1が癌細胞に出現するとブレーキがかかってしまうのでそのブレーキがかからないようにPD-L1に結合するPD-1を塞いでしまおうというのがニボルマブオプジーボ®)、司令官のT細胞がCYTLA-4と結合するとやる気を無くしてしまうのでこのCYTLA-4がT細胞にくっつけないようしたものがイビリムマブ(ヤーボイ®)というお薬です。

 

2020年10月末現在の国内承認状況は

ブレーキがかからないようにするお薬

抗PD-1抗体・・・ニボルマブオプジーボ®)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)

抗PD-L1抗体・・・アベルマブ(バベンチオ®)、アテゾリズマブ(テセントリク®)、デュルバルマブ(イミフィンジ®)

免疫の司令官であるT細胞がやる気をなくさないようにするお薬

抗CTLA-4抗体・・・イピリムバブ(ヤーボイ®)

の6種類が販売されています。

 

抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用も認められるようになってきて、手術をしなくて癌を治療するという選択肢が増えてきていることと、効果も十分に認められるようになってきています。

 

いやー、働きなどが分かっている内容を説明するだけでも難しいのに、現場の最先端の研究をしている先生は何が正しいのか、どんな働きなのかわからない中でそれを証明しながらお薬を開発しているなんてすごい世界ですね!

 

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