医学生や医者ってモテモテなんじゃないの?っと思っている人のための記事No.7
認知症が心配で気分が落ち込んでしまうという方がきました。
認知症がありうるかどうかということは、年齢による変化であれば一部の記憶がかけてしまうのに対して本物だと記憶の一纏め全体がすぽっと抜けてしまって思い出せないので、認知症が心配と本人が話をしている限り、おそらく認知症はないだろうなぁと思いながら診察を始めます。
ただし、脳卒中などによる脳血管性認知症や前頭側頭型認知症だと十分ありうるし、思い込みは禁物です。
認知症のスクリーニングやせん妄などの除外として時間・場所・人の感覚が低下していないかの確認をします。日常生活に困っていなければ仮に認知機能の低下があってもMCI(軽度認知障害)と呼ばれる状態で認知症ではありません。今回の本題ではないので省略します。本気で疑う場合はHDS-RやMMSEと呼ばれるスクリーニング検査を行って、DSM-Ⅴなどの診断基準を満たすかを考えますが、今回はそこまで考えていません。
結論的に認知症ではなさそうでした。
診察中に『かきかえ』と言われる相手が求めていることを確認しています。
かきかえとは?
か:解釈…患者さんは何が問題でその症状がおきていると考えているか
き:期待…医者に対して何を期待して受診しているのか
か:感情…その症状などについてどのように思っているのか
え:影響…その症状などによって日常生活にどのような影響があるか
特に解釈については患者さん自身が信じ込んでいる内容で、医学的に間違っているとしてもそれを正すことは難しいです。そして、医者側も確かに自分側が正しいと引くことが難しいことが多いです。中間的な答えを出す場面でナラティブベースドメディスンなどあるんですが…。
なぜ『かきかえ』を確認しているかと言うと診療過程を促進・改善1)2)し、患者さんのアドヒアランスを1.62倍に改善3)し、健康的な結果をもたらす4)と言われているからです。
この『かきかえ』をさりげなく確認してるんだよということが学生さんに学んで欲しかった内容の一つでした。
世間話をしてるだけではないんですねー!
さらに認知症を考えるときにうつ病はルールアウトすることが必要なので、そこはPHQ-2というスクリーニング検査の応用的な質問でさりげなく聞いています。
さらに最後に動機付け面接を行っていたので、それについては簡単に
こちらから患者さんの好ましいと思われる発言と好ましくないと思われる発言を考えて、好ましいと思われる発言を強調していく診察技法と説明しました。
本当はもっと背景の歴史やら何やらあるんですが、単純にすると患者さんが自分から発言した好ましい発言を繰り返したり、聞き返して再度発言してもらったりして患者さん自身がそう思っているでしょ?ということを本人にわかってもらえるようにする感じです。
ほらほら、こうやって聞くと診察中の何気ない言葉が実は意味があったんじゃないの?って思ってくるでしょ??
というように意味深に説明しました。
すると、学生さんが
「さっきのパチスロの話は何か意図があって話してたんですか??」
とキラキラした目で聞いてくれましたが…
「ごめん、単なる趣味の話です、世間話です…」
とフリを回収できませんでした…。
その次がまた、経験してもらいたい患者さんが続きました。
今日はこの辺で。
1) Rao, Jaya K., et al. "Communication interventions make a difference in conversations between physicians and patients: a systematic review of the evidence." Medical care 45.4 (2007): 340-349.
2) Dwamena, Francesca, et al. "Interventions for providers to promote a patient‐centred approach in clinical consultations." The Cochrane Library (2012).
3) Zolnierek, Kelly B. Haskard, and M. Robin DiMatteo. "Physician communication and patient adherence to treatment: a meta-analysis." Medical care 47.8 (2009): 826.
4) Epstein, Ronald M., et al. "Patient-centered communication and diagnostic testing." The Annals of Family Medicine 3.5 (2005): 415-421.