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認知症って?

物忘れと認知症の違いが気になる方はこちらの動画をご覧ください。

 

 

認知症とは

①脳の機能が低下し
②認知機能障害が現れ
③生活の障害が現れた状態

を言います。

原因となる疾患としては70以上あり、有名なものがアルツハイマー認知症などです。

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アルツハイマー認知症の自然経過

 

②認知機能障害の中心的な症状は

ⅰ記憶障害

見当識障害(周囲の状況がわからなくなる)

ⅲ理解・判断力の低下

 

の3つです。

 

ⅰ記憶障害とは新しいことを覚え、保持し、思い出すの3段階のどれかがうまくいかない状態を言います。認知症では昔の記憶は覚えていることが多いですが、新しい出来事を記憶するのが難しいことが特徴的です。

 

見当識障害とは時間、場所、人がわからなくなる状態です。

時間の感覚が最初に失われてしまうことが多いため、

「今日は何日ですか?季節はなんですか?」

と聞くのは認知症の可能性があるかを確認するためによく質問されます。

 

MCI(軽度認知障害と呼ばれる状態は毎年4.9-9.6%が認知症になり、逆に約20%が数年以内に正常に戻る状態を言います。この状態は認知症のお薬の効果がなく、薬により死亡率が上がり、副作用が出やすい状態のため、お薬は使いません。お薬はありませんが、運動、健康的な食事が正常化を促すことが証明されています。②の認知機能障害がある状態で、かつ、③生活の障害がない状態です。

 

 ①の脳の機能が低下することは確認できませんが、②の認知機能障害がある状態で、かつ、③生活の障害があれば認知症と診断されます。

 

③生活障害とは家庭外では仕事上のミスが多い、買い物ができない、交通機関を使えない、公共料金を支払えない、ATMでお金をおろせないなどです。家庭内では電話ができない、食事の準備ができない、薬を飲めない、掃除洗濯ができない、エアコンなどの家電が使えないなど。さらに進むと食事、排泄、入浴、洗顔、着替えのどれかができなくなると施設入所を考え、自宅でも24時間の介護が必要な状態となります。

 

ご自分で認知症かもしれないと認識できる状態は認知症は考えにくく、家族や友人が気づくことが多いです。

 

 ①②③を満たして認知症と診断された場合、次に治療が可能な認知症が隠れていないかを確認します。

などを検査します。

 

急激に進行する認知症は必ずこの治療可能な認知症が隠れていないかを確認し、ゆっくりと進行する場合では必要に応じて採血、CTやMRI検査などを追加します。

 

認知症になりやすい要因で改善可能なものとして

  • 大量のアルコール(非摂取者と比較して2.2〜4.6倍)
  • 睡眠薬(1.43〜1.7倍)
  • 高血圧(2.4〜10.1倍)
  • 糖尿病(1.5〜2.5倍)

があります。

 

認知症と関連し、間違われやすい症状として『せん妄』という状態があります。

せん妄とは見当識が急激に障害された意識障害の状態を言います。見当識障害とは時間、場所、人がわからなくなってしまう状態です。不安、いらいら、不眠、精神運動興奮を伴い、幻覚(時に幻視)や妄想もあることがあります。認知症の症状と共通した症状ですが、せん妄は治療により改善が可能です。

 

せん妄はせん妄準備状態の人に、ある条件(誘因と言います)があると起こります。

せん妄準備状態とは認知症や脳血管障害によって脳の機能が低下しているときや重い病気にかかっている状態です。

誘因としては

(1)睡眠薬などの薬、血圧の変動、心肺機能の低下、発熱や下痢、脱水や貧血、手術直後、飲酒や断酒のような体に関する状態

(2)急激な環境変化、配偶者との離別や死別、経済的に困っている、周囲から孤立、眠れない、身体的に拘束される、夕方や夜間など心や環境に関する状態

の2種類があります。

 

せん妄になりやすい薬としてエチゾラムデパス®)、ゾルピデムマイスリー®)、ファモチジンガスター®)、ステロイドなどが知られています。認知症の人はせん妄になりやすいです。

 

 

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中核症状と周辺症状

認知症の人はその周辺症状(BPSDとも呼ばれます)という関連する症状がみられます。

  • 睡眠が取れない、人を拒絶したり、暴言・暴力を振るったりする行動症状
  • 不安や焦り、幻覚、うつ状態や妄想などの心理症状

の2種類があります。

このBPSDという症状に対しては対応のコツがあり、薬を使わずに対応するのが望ましいですが、止むを得ないときには薬を使う場合もあります。認知症の人は記憶障害があるので強い感情しか残りません。周囲の人に迷惑がかかった場合に怒っても本人は怒られて不快だったことは覚えていますが、何故怒られたかや怒られたこと自体を忘れてしまいます。そのため、感情的な対応はより一層興奮や精神的な不安定に繋がります。

 

BPSDの対応のコツは認知症の人は何かに困っている状態で、その困っていることが改善しなければ症状が改善しません

例えば、入浴中に急に怒った認知症の人は入浴したこと自体を忘れてしまい、自分が裸になっているのに見知らぬ人に取り囲まれていると勘違いして怒ってしまう場合があり、対応としては2人で介助することを原則として1人は常に患者さんの視界からいなくならないようにして「入浴してますよ」と状況を何回も説明を繰り返しつつ入浴介助をするなど、状況がわからなくなって不安にならないように工夫をするなどです。

歩き始めない認知症の人は足元に床があることを忘れてしまってここがどこかわからず、足を踏み出して良いかわからなくなるくらい短期間の記憶がなくなる場合があり、その場合は何回も本人に足元を確認してもらって安全であることを伝えながら歩いてもらうなど工夫もします。

 

嫌な感情だけではなく、楽しかった感情も残るので、認知症の患者さんでニコニコ笑って過ごせている方をみると良い家族や良いサービスにかこまれているのだなぁと医者の私としては感じます。ただし、その状況を作るために家族が疲弊して過度な負担となってしまうのは本末転倒のため、休みが取れない状態のご家族には私の方から逆にお薬をお勧めすることもあります。お薬を使うことが重要な時もありますがバランスが重要です。

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チャレンジ行動

 

残念ながら認知症の治療薬はなく認知症自体の進行を遅らせることもありません。認知症の症状を遅らせる薬がアリセプトなどの認知症の薬と言われているお薬です。さらに薬の効果も記憶力のテストの点数をわずかに改善する程度のため、ドイツでは85歳以上の約2.7%しか処方されていない対して、日本は17%も(約6.7倍)も処方されています。

 

認知症の進行を抑制する(認知症自体の進行を遅らせるんですよ!!)方法として証明されているのが、

  • 血糖や血圧のコントロール
  • 禁煙
  • アルコール摂取量の制限(週にアルコール56g未満、ワイングラス4杯未満まで)
  • 会話する
  • 運動(週に150分以上の優酸運動)
  • バランスの良い食事(地中海食が有名です)
  • 規則正しい生活

です。残念ながら認知症予防のサプリとして使われているビタミンやイチョウ葉エキスは認知症予防効果がないとWHOのガイドラインが明言しています。

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